株式会社清和物産

糖尿病(3)



糖尿病の治療

◎食事療法の大切さ  

インスリン非依存型糖尿病では肥満をともなうことが多く、前に述べたように、インスリン抵抗性をとりのぞくために減量が必要です。まず各人の標準体重を簡易算定法または標準体重表から求めます。  

その標準体重1キログラム当たり、生活強度1(一般事務、管理職、専業主婦など)では25キロカロリー、強度2(製造販売、サービス業など)では25〜30キロカロリー、強度3(農・漁業、建設業など)では30〜35キロカロリー、強度4(重量物の運搬や農繁期の就労者、プロスポーツ選手など)では35〜40キロカロリーを目安とし、年齢、性別や目標体重などを考慮して、1日のエネルギー所要量を算定します。  

しかし、近年、各職種とも労作量がいちじるしく減少する傾向にありますので、多くの場合1キログラム当たり25〜30キロカロリーが適用されます。  

インスリン依存型糖尿病の小児では、正常な発育に必要かつ十分な量のエネルギーを年齢や運動量に合わせて与え、エネルギー過剰でふとらないような配慮が必要です。  

◎運動療法
 
運動療法は食事療法と並んで糖尿病治療の二本柱です。運動は消費エネルギーを増し、体重の適正化をはかり、また筋肉や脂肪組織などのインスリン感受性を増すことによって糖代謝を改善します。  

運動の消費エネルギーは、摂取エネルギーの5〜10パーセントを目安にします。たとえば指示エネルギーが1600キロカロリーの場合は、80〜160キロカロリーの運動を目標にし、散歩(毎分60メートル)なら40〜60分、なわとびなら30分、ジョギング(毎分120メートル)なら20分程度の運動を毎日つづけます。  

また、脈拍数で運動強度をおおまかに推定できるので、40歳代では1分間130、60歳代では120を持続する運動が適切です。

消費エネルギーを調べるのに、“カロリー・カウンター”などが市販されており、便利です。  運動療法を始めるにあたっては、まず血圧や心電図、できれば運動負荷試験(マスターやトレッドミル負荷など)の評価を行ない、合併症の進行度の精査とあわせ、運動の安全性が事前にチェックされなければなりません。

運動の有用性を過信したために、心筋梗塞をはじめ眼底出血、腎症の悪化、下肢の血栓症や足の指の壊疽など思わぬ余病を招くことも少なくありません。  

また、血糖コントロール不良時にはかえって血糖は上昇したり、インスリン治療中の患者では運動時に低血糖をおこすことも少なくありません。

◎インスリン自己注射  

インスリン依存型はもちろん、インスリン非依存型糖尿病でもインスリン治療が必要となれば、医師の指導のもとに自分自身でインスリンを注射することが法的にも認可され、実施されています。医師や看護婦に注射手技を正しく指導してもらい、清潔で正確なインスリン注射をしなければなりません。  

注射部位は両側下腹部や大腿前面(前者のほうが吸収が安定)に、毎回3センチぐらい場所をずらして皮下注射します。

現在では遺伝子工学でつくられたヒトインスリン製剤(1ミリリットル当たり40単位と1ミリリットル当たり100単位)が多く使われています。1日2回以上の頻回注射が必要な場合、携帯できるペン型注射器が便利です。


◎血糖セルフモニタリング

血糖の動揺がはげしいインスリン依存型糖尿病では、インスリンの適正量を決めるために、いろいろな時間帯で血糖の動きを調べる必要があります。

最近では、各種の手軽な血糖測定器が市販され、それを用いて患者自身が自宅や会社で血糖を自己測定しています。  

指先を注射針やランセットという器具で刺して血液を1滴垂らし、試験紙にぬれば血糖を簡単に測ることができます。血糖コントロールのむずかしい症例の強化インスリン療法には、インスリンの頻回注射や混注(速効型と中間型インスリンを混ぜて使う方法)と、血糖の自己測定が必須条件です。


糖尿病家族へのアドバイス
 
生涯にわたり糖尿病の治療を遂行するには、家族の理解と協力が不可欠です。独居生活者や単身赴任者の糖尿病コントロールが、しばしば困難であることからも明らかです。食事は家族と同じものを指示された量だけ食べるように、温かく見守ってあげましょう。  

インスリン依存型糖尿病患児では、ほかの病気にかかったときの対応が重要です。かぜや高熱を出したり、嘔吐や下痢をしたときなどでは血糖が上昇しやすく、ケトアシドーシス(血液が酸性に傾き、糖尿病昏睡をおこす)の危険があります。


血糖や尿糖を測定し、速効型インスリンを追加します。十分な水分補給も必要です。  吐き気が強く、食べられないときにもインスリン注射をやめてしまわないことが大事で、かならず主治医に連絡をとり、指示を受けることです。  

また、思春期や結婚期の精神的葛藤も、家族の思いやりが問題の解決に大きく寄与します。


妊娠と出産

糖尿病患者でも、進んだ合併症(網膜症や腎症)がなければ、健常者とまったく同様に妊娠・出産が可能です。インスリン治療により血糖コントロールをはかった後に受胎する、計画妊娠がすすめられます。  

妊娠中は血糖の自己測定を励行し、食前血糖は1デシリットル中100ミリグラム以下、食後2時間は120ミリグラム以下で、HbA1cは7パーセント以下を目標とします。

1日の摂取エネルギーは妊娠前半では標準体重1キログラム当たり30キロカロリーに150キロカロリーを加算し、妊娠後半では1キログラム当たり30キロカロリーに350キロカロリーを加算した値を目安にします。

妊娠中の至適な体重増加は6〜8キログラムで、8キログラム以内にとどまるよう食事を調節します。  妊娠はあくまで計画・管理された後に許可されるべきもので、もし血糖コントロールがわるいまま妊娠し、網膜症や腎症がある程度以上に進んでいる場合は、治療的流産により早期に妊娠を中断させ、母体の安全を優先します。

血糖管理がわるい場合には、死産や先天異常児出産の可能性が高くなり、母体の網膜症や腎症の増悪もおこります。




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