株式会社清和物産


ネフローゼ症候群

おもな症状は、浮腫(むくみ)や大量の蛋白尿、高脂血症(高コレステロール血症)で、原因不明の特発性ネフローゼ症候群と、原因のわかっている続発性ネフローゼ症候群があります。
 ひとくちに続発性ネフローゼ症候群といっても、その種類は多く、糖尿病からくるもの、膠原病の1つである全身性エリテマトーデスからくるもの(オオカミのけわしい顔という意味で、ループス腎炎ともいう)が、重要です。
 ネフローゼ症候群の特徴は、大量の蛋白尿、低アルブミン血症(アルブミンという蛋白が低くなる)のほかに、しばしば浮腫、高コレステロール血症をきたす症候群で、わが国では、「厚生省特定疾患ネフローゼ症候群調査研究班」の診断基準があります (表:ネフローゼ症候群の診断基準)
 また、ネフローゼ症候群を、病理組織型でみると、微小変化型ネフローゼ症候群、巣状糸球体硬化症、膜性腎症、びまん性増殖性糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎などがあります。
 いずれも入院治療の対象となりますが、小児では微小変化型が多く、副腎皮質ステロイド薬が有効な場合が80パーセント以上を占めています。
 しかし、副腎皮質ステロイド薬に反応しないステロイド抵抗性のものや血尿をともなうもの、高血圧をともなうものはほかの病型が多く、腎生検による病型診断を行なって治療法をきめてもらったほうがよいでしょう。


■経過
ネフローゼ症候群は、小児期より成人期にわたって慢性に経過します。その間、再発ないし増悪をくり返す例も多く、病型、病態により臨床経過はさまざまです。
 ネフローゼ症候群の社会復帰を考慮した治療・生活上の目標は、ある程度の制約はあるにしても、完全寛解ないし軽快安定した状態のもとで就学、就業ができることです。女子の場合は結婚、家事などが可能となり、かつそれにより病態の悪化をみない状態をつくりだすことです。
■治療効果判定
ネフローゼ症候群は、高度の蛋白尿、低蛋白(アルブミン)血症、高脂血症および浮腫など、比較的症状が多彩であり、治療目標もわかりやすい疾患です。
 ネフローゼ症候群の治療効果判定基準については、おおむね尿蛋白排泄量、血液化学成分(とくに低蛋白血症ならびに高脂血症があるかどうか)、臨床症状(とくに浮腫の有無、利尿の多少)などが効果判定の指標となっていますが、尿蛋白、腎機能その他(可能な場合は腎組織所見)の評価項目を総合的に判断して、効果判定をしています。
■治療・生活上の注意
「ネフローゼ症候群患者の治療・生活注意基準」を 表(ネフローゼ症候群患者の治療・生活注意基準) に示しました。
 これは、かなり幅のある記述がなされている部分も多いのですが、再発、増悪をくり返すこの病気では、生活注意基準を一律に設定することはひじょうに困難であり、個々の病状に関しては、臨床経過、病態などを踏まえて、きめこまかくその対応を決めてもらう必要があります。
 この基準は、治療効果と腎機能の2つの面から構成されており、治療効果により管理区分を4つに分け、さらに腎機能の程度によって2分されています。

 区分4の病期 完全寛解、すなわち、尿所見や血液化学成分の異常がなく、腎機能も正常の状態にあります。勤務、学習、家事などの社会生活全般において、ほぼ健常者と同等の活動が可能です。妊娠・出産に関しては一般に支障はありませんが、経過、腎組織病型を参考にして医師はその判断をします。
 医療に関しては、完全寛解後、病状が不変であることを確かめて薬物療法を中止しますが、その後も医師による経過観察が必要です。

 区分3の病期 不完全寛解T型、すなわち、血液化学成分は正常化しているが、軽度の尿蛋白(1日1〜2グラム程度)が持続している状態です。
 腎機能が正常ないし軽度低下(クレアチニン・クリアランス値が1分間に70ミリリットル程度以上)の時期では、一定期間経過を受け、病状に変化がなければ、無理をしないことを前提にして、ふつうの生活、勤務、学習、家事が可能です。
 そして、月1回程度の経過観察は必要であり、病状が固定すれば、ステロイド療法、免疫抑制療法を中止することができます。
 妊娠・出産に関しては、腎機能の面からは支障はありませんが、経過、腎組織病型を参考にして判定してもらうことが望ましいといえます。
 腎機能が中等度以下(クレアチニン・クリアランス値が1分間に50〜70ミリリットル)の時期では、生活一般、勤務、家事、運動などは肉体的過労のない程度に制限されます。妊娠・出産に関しては、原則としてすすめられません。月1〜2回程度の定期的検査を受ける必要があります。
 症状が長期にわたって固定した場合は、ステロイド療法・免疫抑制療法を中止できます。

 区分2の病期 不完全寛解U型、すなわち、治療により改善の傾向を示しても、血液化学成分が正常ないし軽度ネフローゼ型を示し、尿蛋白は1日2〜3.5グラム程度持続している状態です。
 腎機能が正常ないし軽度低下(クレアチニン・クリアランス値が1分間に70ミリリットル程度)の時期では、日常生活(勤務、家事など)における肉体的労働を厳重に制限する必要はありませんが、経過により尿蛋白量が固定し、血液化学成分も正常域であれば、制限を緩和します。妊娠・出産は原則としてすすめられません。
 医療に関しては、月数回の定期的検査と加療継続が必要ですが、病状が長期にわたり固定した場合は、ステロイド療法、免疫抑制療法を中止できます。
 腎機能が中等度ないし高度低下(クレアチニン・クリアランス値が1分間に70ミリリットル以下になる)している時期では、生活全般にわたり制限され、勤務、学習、家事などの疲労を感じない範囲の活動となります。妊娠・出産はすすめられません。
 医療面では、原則として外来治療でよいのですが、尿蛋白排泄量や腎機能が変動する場合は入院治療も必要です。

 区分1の病期 ステロイド療法などに反応せず、尿蛋白量は1日3.5グラム以上を持続しており、血液化学成分もネフローゼ型を示して、難治性ネフローゼ症候群の状態にあります。
 腎機能が正常ないし軽度低下(クレアチニン・クリアランス値が1分間に70ミリリットル程度以上になる)した症例は、日常生活は原則として制限されますが、経過により軽勤務、軽い家事などを許可されます。原則として通学による学習は可能と考えられます。
 腎機能が中等度ないし高度低下(クレアチニン・クリアランス値が1分間に70ミリリットル程度以下)していても、症状が安定している場合には、一般に社会生活は制限されますが、疲労を感じない程度の活動は可能です。この病期では、妊娠・出産はすすめられません。
 治療は、通院加療で差しつかえありませんが、経過により入院治療も考慮します。
■食事療法
食事療法に関しては、日本腎臓学会からの報告が示されています (表:ネフローゼ食の区分)
 摂取蛋白量は、腎機能が50パーセント以上に維持されていれば、1日体重1キログラム当たり成人1.3グラム、学童2.0グラムの蛋白食とします。寛解期には、普通食となります。腎機能が50パーセント以下の状態では成人1.0グラム、学童1.5グラムにまで制限を行ないますが、この場合の摂取蛋白は、蛋白価(プロテインスコア)の高いものが望まれます。
 添加食塩量は、腎機能の良否にかかわらず、乏尿浮腫期(尿量が少なく、むくみのあるとき)では成人で1日0〜3グラム、学童0〜2グラム、利尿期で成人3〜5グラム、学童2〜3グラム、浮腫消失期には成人5〜8グラム、学童3〜5グラムに緩和し、寛解期では、ほぼ普通食となります。
 しかし、高血圧を合併している場合は、区分表以下に制限し、食塩喪失傾向があれば、記載量以上にふやす必要があります。
■治療・生活上の注意のまとめ
 治療の基本は、発病期に安静、保温に努め、むくみがひどいときは安静を守るのはもちろんのこと、かぜなどの感染症にかからない注意が大切です。
 食事療法は、良質蛋白・高エネルギー食で、食塩制限が原則です。食塩については、むくみの程度によって決め、むくみが高度の場合は、1日2グラム前後、ときには0(無塩)とします。
 薬物療法としては、副腎皮質ステロイド薬や利尿薬の使用がありますが、病態によっては、副腎皮質ステロイド薬が無効な場合があります。


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