株式会社清和物産

肝硬変(かんこうへん)




(原因)

 慢性肝炎が長期間つづいて肝臓のなかの肝細胞がこわれ、その代わりにいわゆる“すじ”のような組織がふえ、肝臓全体が硬くなって肝機能が低下する病気です。表面は大小不同の凹凸、まるでこぶの多いじゃがいものように変化していきます。肝臓が硬くなっているため、本来肝臓に帰るべき血液がほかへ流れるため、食道や胃の静脈瘤、痔が発生してきます。

 原因として、わが国ではB型およびC型のウイルス性肝炎が大部分を占めていますが、アメリカやヨーロッパで多くみられるアルコール性肝硬変は、わが国では、肝硬変全体の6分の1ぐらいにすぎません。


(症状)

  肝臓が長い間障害されている人の手は、手のひらの真ん中を除いて異常に赤くなります。胸や背に、にきびに似た赤い斑点(クモ状血管腫)が出たり、男性なのに乳房が大きくなってきたら、これも女性化乳房といって肝硬変の赤信号の1つです。
 また、腹がなんとなくふくらんできて、鏡の前に立ち、横からみて下腹部が異常にとび出していたり、あお向けの状態で腹のふくらみが横へ広がるようだったら、腹のなかに水(腹水)がたまっているかもしれません。単なる脂肪なら、腹の皮を厚くつまめます。

 臍を中心として、四方に拡張した血管が浮き出てみえる“メドゥサの頭”といわれる病状が出てきたり、症状が進むと全身の皮膚が黄色(黄疸)になったりします。食道や胃の静脈瘤が破れると、大量の血を吐いたり(吐血)、コールタールのような便になったり(下血)、いずれにしても大量の出血をみるものです 。

 さらに病状が進むと手のふるえ、昏睡などの神経症状も出てきます。



(診断)

   末期になるまで臨床症状をまったく示さず、検査上にもほとんど異常を認められない場合がありますが、大部分は慢性肝炎が先行しています。

 血液中のGOT、GPT、ZTT(硫酸亜鉛混濁反応)、TTT(チモール混濁反応)などのいわゆる肝機能検査が、診断の基本です。慢性肝炎の経過中に、ZTT、TTT、γ -グロブリン(免疫グロブリン)値が増加してきたら、肝硬変を疑います。ICG(インドシアニングリーン)という色素を注射し、肝臓へのとりこみの程度を測定すると肝機能の推定ができますが、肝硬変ではICGのとりこみが低下します。

 このほかには、患者に対する負担が少ない超音波検査法、CT(コンピュータ断層撮影)といった肝臓の形態を診断する方法があります。食道・胃静脈瘤は、バリウム検査か内視鏡により診断します。また、血管造影は、静脈瘤の有無や肝がんの発生を診断する方法として、きわめて有用です。

 もっと診断的価値の高いものとしては、肝臓を内視鏡で観察する腹腔鏡や肝生検法があり、確定診断は肝生検による組織検査です。



(治療)

  肝硬変から正常の肝臓に戻ることはないので、現在の肝機能をいかに保つかが治療の要点です。肝硬変の治療は、進行状態、時期により異なってきます。

 肝臓の機能が保たれている、いわゆる代償期にある場合は、外来通院で経過をみて、日常生活の指導を行ないます。特別な重労働でなければ適度に動くようにして、可能なかぎり社会復帰させるよう指導しています。

 腹水、黄疸、静脈瘤破裂などの症状が出現した非代償期の肝硬変は、入院加療が必要になってきます。腹水には利尿薬を投与し、静脈瘤の破裂には止血チューブでいったん止血した後、内視鏡により硬化療法(硬化剤を注入し止血する)を行ないます。
 静脈瘤は破裂しなくても、内視鏡的に破裂のおそれのあるときには予防的に内視鏡による硬化療法が必要です。



(食事)

  一般には高蛋白、高カロリーとされています。しかし、高蛋白食をとっても、十分消化吸収できないと、腸内の大腸菌を増殖させ、腹にガスがたまり、逆に苦しくなったり、高アンモニア血症の誘因になってしまうことがあります。
 また、症状によって運動量も制限されるので、個々にあわせたカロリー摂取が望ましいわけです。塩分のとりすぎは、腹水の症状をさらに悪化させます。

 酒はもとより、タバコは直接的に肝臓へ影響しないものの、食欲をおとしてしまう点で好ましくありません。



◎腹水の対策
   
   肝臓の機能が衰えると、アルブミンの合成ができなくなって、腹に水がたまってきます。この腹水の一般的療法としては、まず安静を保つことと食事療法が大切です。安静を保つことで肝臓への血流量がふえ、肝臓を保護すると同時に、腎臓への血流量もふえて、排尿状態もよくなります。

 次に利尿薬を使いますが、それでも減らない腹水は、腹腔へ直接針を挿入して排除する処置を行ないます。

 しかし、腹水といっても大切な栄養分が含まれています。多量に排除してしまうことは、腹部膨満そのものはらくになりますが、半面、体内の栄養が低下し、さまざまな症状をおこしかねません。

 したがって、排除した腹水の細胞成分を除去して必要な分を濃縮し、再び静脈から注入する方法、いわゆる還流療法も行なわれています。



◎生活上の注意

肝硬変は経過の長い病気です。だからといって、一生この病気に縛られつづけることはありません。ふつうの人と同じように生活し、マイペースを保っていくことです。

 毎日の健康チェックとしては、体重・腹囲の確認、定期的来院に努めること、なんらかの症状が現われたからといって、医師の指示なしに不必要に市販の薬を飲まないよう心がけることが大切です。




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