株式会社清和物産


白内障(はくないしょう)



 水晶体が濁る病気を白内障といいます。水晶体は瞳孔のすぐ後ろにあるので、白内障が進むと瞳孔が白く濁ってみえます。このことから「白そこひ」とも呼ばれています。

 (原因) 白内障には、加齢とともにおこる老人性白内障、生まれつき水晶体が濁っている先天性白内障、糖尿病による糖尿病性白内障、副腎皮質ステロイド薬の長期使用によって生じるステロイド性白内障、放射線を浴びることによっておこる放射線白内障、ぶどう膜炎などにともなう併発白内障、けがによる外傷性白内障など、さまざまなものがあります。先天性白内障の場合、遺伝性のものと、妊娠中に母親が風疹にかかったときなどにおこる非遺伝性のものがあります。

 (症状) なんとなく目がかすんだり、目の前がちらちらしたりすることから始まり、だんだん目の前に霧がかかったようにぼんやりとしかみえなくなってきます。白内障になっても、目の充血や痛み、目やになどはみられませんが、水晶体が濁っているので、いくらめがねをかけても、視力を出すことはできません。
 老人性白内障の場合は、濁りが水晶体の周辺から始まるため、初期には自覚症状はほとんどありませんが、水晶体の中心部の後面から混濁が始まる場合には、初期から視力が悪くなります 。
  (診断) 細隙灯顕微鏡検査で水晶体に混濁がみられると、白内障と診断されます。白内障の程度をさらに正確に調べるためには、瞳孔を散瞳したうえで細隙灯顕微鏡検査を行ないます。

 (治療) 白内障では手術が必要なほどひどくない場合は、まず点眼薬や内服薬が使われます。これは、一度濁った水晶体を再び透明にするのではなく、白内障の進行の速度をある程度遅くするためのものです。薬を使っても進行がみられた場合には、手術が必要です。

 (手術) 時期は、その人の生活に必要な視力がなくなったときと考えられています。したがって、自動車運転が必要な人では免許の基準である視力0.7未満で手術が考慮されますし、本を読むのが好きな人には0.4程度の視力で手術がすすめられます。また、視力が0.1以下であっても、生活に不自由がなければ、少し手術をのばしてもかまいません。
  しかし、光しかわからない程度まで放置しておくと、水晶体の嚢に小さな裂け目ができ、水晶体内の物質が前房内に漏れ出て、アレルギー性のぶどう膜炎をおこしたり、急性の緑内障になったりしますので、これらの合併症が出る前に手術しなければいけません。

 定期的に眼科を受診し、眼科医の指示にしたがうことが大切です。最近の手術方法の進歩はめざましく、安全で確実な手術ができるようになりました。白内障は目にほかの病気がなければ、ほとんどが手術によって視力をとりもどすことが可能です。不安がらずに手術を受けるのがよいと思います。手術は、子ども以外はほとんど局所麻酔で行なわれます。麻酔の注射をするとき、少し痛みますが、後はほとんど痛みはありません。

 白内障の手術は濁った水晶体をとりのぞく手術です。濁った水晶体を丸ごととり出す方法(嚢内法)と、水晶体の嚢の前のほう(前嚢)を丸く破ってとり、後の嚢は残しておいて濁った中身をとり出す方法(嚢外法)の2種類があります。前房のなかに水晶体が脱臼しているときなどは丸ごととりだしますが、ほとんどの場合、嚢外法で行なわれます。こちらのほうが合併症が少なく、眼内レンズが安全に入れられるからです。


  眼内レンズ 

水晶体をとりのぞいただけでは、ピントが合わなくてぼんやりとしかみえません。なんらかの方法で代わりの凸レンズを補わなければなりません。以前は厚い凸レンズのめがねを用いました。

 しかし、このめがねをかけるとものがゆがんでみえたり、大きくみえたり、周辺がぼやけたりします。また字を読む場合には、このめがねに、老眼の度を加えたさらに分厚いレンズを使用しなければなりません。

 めがねの代わりに、連続して用いることのできるコンタクトレンズも開発されました。このコンタクトレンズはゆがんでみえることはなく、鮮明にみえます。しかし、コンタクトレンズも汚れるので、定期的に眼科検診を受け、レンズの洗浄をしてもらう必要があります。また、異物感もあり、角膜に傷がついたときにははずさなければなりません。

 このようなことから、眼内レンズが登場しました。最近は手術のときにほとんどの人が眼内レンズを一緒に埋めこみます。眼内レンズはプラスチック製の薄い円板状のもので、支えになるよう2本のひげがついています。これはめがねやコンタクトレンズと違ってもとの水晶体とほぼ同じ位置に入りますから、みえ方がもっとも自然に近くなります。また、コンタクトレンズのようにころつくこともありません。

 しかし、なかには眼内レンズが入れられない人もいます。ひどい糖尿病性網膜症がある場合、ぶどう膜炎を合併している場合などは、術後の炎症が強くなり、もとの病気によくないため、眼内レンズは入れられません。また、小児の場合も目の発育による変化や安全性についてまだ十分に研究がなされていないため、一般には眼内レンズは入れません。

 近視がとくに強い場合は、眼球が細長いので凸レンズがなくてもピントが合うことがあります。このような場合には、眼内レンズは入れる必要がありません。

 現在使われているのは、茶目の後ろに固定される後房レンズがほとんどです。さまざまな研究の末、このタイプのレンズがいちばん安全であることが確かめられ、実証されてきているからです。

 片方だけを手術した場合には、手術後、めがねはかけられません。めがねの左右のレンズの度があまりに違うと頭が痛くなったり、むかついたりするからです。この場合には眼内レンズかコンタクトレンズを使用します。

 むかしは人生50年といわれましたが、医学の進歩、社会環境の改善により、平均寿命がどんどん延長しています。年をとってからおこる目の病気はたくさんありますが、なかでももっとも多いのが白内障です。70歳を超えたらほとんどの人が、多かれ少なかれ白内障にかかっているといってよいでしょう。

 しかし、白内障は怖い病気ではありません。また、その手術も今は医学が進歩し、とても安全です。安心して信頼できる医師の指示にしたがうのがよいと思います。


先天性白内障の手術

新生児の水晶体全体が完全に濁っている場合には、生後ただちに手術を行ないます。小さいころからものを少しでもみさせないと、弱視になってしまうからです。

 しかし、片目だけの白内障の場合は、手術をしてもどうしてもよいほうの目だけを使ってしまい、手術をしたほうの目は弱視になりがちなので、少しでも透明な部分が残っていれば、急いで手術はしません。両眼性の場合はめがね、片眼性の場合はコンタクトレンズを使います。